黒祠の島

小野先生入魂の傑作「屍鬼」が余にも素晴らしかったので、他の作品も読んでみようと思い購入。
屍鬼」でのテーマが「神と異端者」であったのに対し、今作は「罪と罰」という、これまた哲学的な内容のものであった。
本格ミステリーという事で、色々と謎を解明していくのであるが、難しいトリック等は使わずに、実にストレートに描いている。ただ、少々強引だと思われるところも無きにしもあらず。
それから、殺され方がやたらと残酷なのも特徴的。
また仏教関係の知識がやたらと深く盛り込まれているのも特徴的である。しかし、それ以上に、本来のテーマである「罪と罰」の描き方が素晴らしい。
やむを得ず加害者となったとしたら、その事情に応じて罪が軽減されるかもしれない。しかいs、ならば何の罪もない者が殺された場合、被害者は一体どうなるのか。結局、どんな事情があろうと罪は償われなければならないのではないか。
そういったことが今回も殆どを占めていた。
これについては明確な答えがないと思うので、話を小説に戻すが、感想として、徐々に引き込まれる世界観や深まる謎などは読んでいて面白いが、小野先生の作品、と考えると、なんだか物足りない気がする、というのが正直な感想である。