ダ・ヴィンチ・コード

知的好奇心と云うか、そう云うものを非常に駆り立てられるような題名、そして内容だと読む前は思った。
が、実際はそれほどのものでもなかった。
確かに前半はなかなか面白い。何故ルーヴル美術館の館長が殺されたのか?奇妙なダイイング・メッセージは一体なんなのか?ダ・ヴィンチをはじめとする知識人が加盟していたといわれる謎の秘密結社、そしてその結社が隠してきた重大な秘密云々…。それらが上品な笑いと時折挿入される薀蓄とともに鮮やかに書かれている。
…のだが、下巻に差し掛かるとそうはいかなくなる。
“重大な秘密”とはいっても、キリスト教でもない我々日本人からしてみれば「だからどーした?」程度のものである。しかし、それは別に問題じゃない。問題なのは展開。
後半に差し掛かるにつれて、今までの「学術的な検証のもとに書いてますよ」的なスタイルから、単純な冒険活劇(ようはハリウッドのスタイル)へと成り下がってしまう。こういう話に逃亡劇とかロマンスとかは求めてないんすよ、俺は。
その他にも、人物の書き込みが少々甘かったり、“暗号の天才”が作り出した暗号にしては、随分と簡単であったり。まあ、やたら難しいものを用意して読者を置いてけぼりにするよりはいいのかもしれないけど、流石にこっちは気付いたのに「判らん」とか言われちゃ「お前ら本当に判らないのか?答え出てるじゃん」と助言したくなってしまう。まあ、知識があり過ぎると単純なものに気付きにくくなる、ということを表現したのかもしれないけど。
あと、「ダ・ヴィンチ・コード」という題名とモナ・リザの絵が表紙の割には、ダ・ヴィンチはただ暗号解読の取っ掛かりに過ぎず、“秘密そのもの”とはそれほど関わりがないのが一番痛いね。
最初は良かっただけに、詰めを何とかすりゃ、もっと面白くなったと思う作品だった。